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建設業法19条の記載事項を、リフォーム契約書に落とす — 16項目の中身と、抜けやすいところ

公開:2026年8月15日

この記事は、訪問販売で工事をともなう契約を扱う事業者向けに、建設業法の規定を整理したものです。一般的な情報提供であり、個別の案件についての法的助言ではありません。実際の判断は弁護士にご確認ください。

建設業法19条の記載事項を調べると、「16項目」と書いてある記事と「15項目」と書いてある記事が出てきます。

どちらかが間違っているわけではありません。条文の作りにそういう事情があります。 まずそこから整理します。

そのうえで、令和6年12月13日から変わった第8号のこと、リフォームの契約書で実際に抜けやすいところ、骨格に使える標準書式のことを書きます。


結論:条文は16号まで。ただし実務上は15項目です

条文を見ると、第1号から第16号まであります。ところが第16号はこれです。

十六 その他国土交通省令で定める事項

受け皿の規定です。 ここに何が入るかは、国土交通省令で決めることになっています。

そして、その省令の定めが見当たりません。

建設業法施行規則を第13条の2から第13条の7まで当たりましたが、いずれも別の委任規定でした(認可申請、相続、電磁的措置など)。「法第19条第1項第16号の国土交通省令で定める事項」という規定を見つけられませんでした。

傍証があります。 国土交通省自身のガイドラインが、契約書面の必要記載事項を①から⑮の15項目として列挙しています。第16号は掲げていません。「建設業法令遵守ガイドライン(第11版)」も「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」も、どちらも15項目です。

つまり、こういうことです。

  • 条文の号数は16まである
  • 第16号は将来の受け皿で、いまのところ省令による上乗せは見当たらない
  • だから実務上は15項目
なお、施行規則を全条にわたって走査したわけではありません。 「確認した範囲では見当たらない」という書き方にとどめます。

ただし、別の法律による上乗せはあります。 解体をともなう工事のときです。後の節で書きます。


15の記載事項(条文どおり)

条文の文言を、そのまま並べます。太字にしたところが、リフォームで見落とされやすい部分です。

  • 工事内容
  • 請負代金の額
  • 工事着手の時期及び工事完成の時期
  • 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
  • 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
  • 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  • 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
  • 価格等の変動又は変更に基づく工事内容の変更又は請負代金の額の変更及びその額の算定方法に関する定め
  • 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
  • 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
  • 十一 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
  • 十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  • 十三 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
  • 十四 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  • 十五 契約に関する紛争の解決方法

「定めをするときは」がある号と、ない号があります

ここは条文の読み方として大事なところです。

第4号・第5号・第10号・第13号には「定めをするときは、その内容」という条件が付いています。定めを置かないなら、記載しなくてよいという構造です。

一方、第1号から第3号、第6号から第9号、第11号・第12号・第14号・第15号には、その条件がありません。 つまり必ず書きます。

第6号・第7号・第8号を「うちは天災の取り決めなんてしていないから」と飛ばすことはできません。 条文は「定めに関する事項」を書けと言っているので、定めを作ったうえで書くことになります。


令和6年12月13日から、第8号が変わりました

資材の高騰を受けた改正です。訪販リフォームにも直接効きます。

改正前

八 価格等(…)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更

改正後(現行)

八 価格等(…)の変動又は変更に基づく工事内容の変更又は請負代金の額の変更及びその額の算定方法に関する定め

「及びその額の算定方法に関する定め」が加わりました。

変わったのは、「変えることがある」だけでは足りず、「どう計算して変えるのか」まで書く必要があるという点です。

「協議しない」と書くと、それ自体が違反です

ここが今回の改正でいちばん重要な部分だと思います。国土交通省の説明会資料に、はっきり書かれています。

「変更しない」あるいは「変更を認めない」のように、協議を前提としない規定である場合には、建設業法第19条第1項に違反する。

条項を置きさえすればいい、という話ではありません。

「価格が変動しても請負代金は変更しないものとする」——一見すると事業者に有利な条項ですが、これを書くと19条違反になります。 協議を前提としていないからです。

必要なのは、協議のうえで変更しうることと、その場合の算定の考え方を書くことです。

第6号と第7号にも、以前から「算定方法」の文言が入っています。 令和6年改正で追加されたのは第8号だけですが、設計変更(6号)と不可抗力(7号)についても、算定方法を書く必要があるという状態は、以前から続いています。ここを機に、3つまとめて見直すのが実務的です。

リフォーム契約書で抜けやすいところ

行政が名指ししているもの

国土交通省のガイドラインが、違反となる事例として具体的に挙げているものです。

「〇〇工事一式」という書き方

第1号(工事内容)の記載として不十分と明記されています。リフォームの見積書と契約書で、いちばん起きやすい形だと思います。「外壁塗装工事一式」「屋根改修工事一式」では足りません。

注文書と請書だけで済ませる

「注文書と請書のみ(又はいずれか一方のみ)で契約を締結した場合」が違反対象として挙げられています。典型的な不備は、基本契約書または契約約款の添付・引用がないことです。注文書と請書だけでは、15項目を書ききれません。

注文書・請書方式で認められている形と、消費者相手には使えない特例については注文書と請書だけで済ませていませんかに書きました。

着工後に契約書を交付する

契約書面の交付については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として着工前に行わなければならない

条文の文言も「契約の締結に際して」です。「あとで持ってきます」は、条文と合いません。

追加工事を口頭で処理する

第19条第2項が、変更の内容も書面にして相互に交付することを求めています。

請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

リフォームは追加工事が出やすい工事です。 ここが実務上いちばん危ないところだと思います。

条文の構造から抜けやすいもの

こちらは行政が名指ししているわけではありませんが、条文を読むと落ちやすいと分かる箇所です。

第11号(検査の時期及び方法/引渡しの時期)

「工事完成の時期」(第3号)は書いてあるのに、検査と引渡しが書かれていない契約書があります。第3号と第11号は別の項目です。

第15号(紛争の解決方法)

条件が付いていないので、必ず書きます。 「協議する」だけで足りるかは別として、何も書かないのは条文に反します。

第9号(第三者が損害を受けた場合の賠償金の負担)

足場からの落下物、隣家への影響。リフォームでは現実に起きる話ですが、条項が無い契約書を見かけます。


「署名又は記名押印をして相互に交付」です

見落とされやすいので、独立して書いておきます。

条文の柱書は「署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」です。

一方向ではありません。 事業者がお客様に渡して終わり、ではなく、双方が署名または記名押印したものを、互いに持ち合う必要があります。

ここは特定商取引法と違うところです。 特商法の書面は、事業者からお客様への一方向の交付で足ります。建設業法は双方向です。

2つの法律が同時にかかる場面については、リフォーム訪販は特商法と建設業法が同時にかかるに整理しました。


骨格に使える標準書式が2つあります

ゼロから作る必要はありません。公的なひな形があります。

民間建設工事標準請負契約約款(乙)

中央建設業審議会が決定し、国土交通省が公表しているものです。最新は令和7年12月2日改正です。

(甲)と(乙)があり、(乙)のほうがリフォームに合います。 PDFの冒頭にこう書かれています。

(乙)は「個人住宅建築等の民間小規模工事の請負契約についての標準約款である

対して(甲)は「民間の比較的大きな工事を発注する者と建設業者との請負契約についての標準約款」です。

個人のお客様相手のリフォームなら、参照するのは(乙)です。

住宅リフォーム工事標準契約書式(住宅リフォーム推進協議会)

業界団体が公表しているもので、PDF版は無料でダウンロードできます(複写式の紙版は有償)。最新は令和7年版です。

契約書のほか、注文書・請書、工事打ち合わせシート、見積書、工事内容変更合意書、工事完了確認書などが揃っています。

「工事内容変更合意書」があるのが実務的です。 第19条第2項(変更契約)に対応する様式が最初から用意されている、ということです。

ただし、そのまま使えば安全というものではありません。 ひな形は骨格であって、第1号の工事内容をどう具体的に書くかは、結局その現場ごとに埋めるしかありません。「一式」のまま提出すれば、様式が正しくても内容が足りません。

解体をともなうなら、項目がさらに増えます

屋根の葺き替え、外壁の張り替え、設備の撤去。 リフォームでは解体が発生します。

建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)第13条第1項が、こう定めています。

対象建設工事の請負契約の当事者は、建設業法第十九条第一項に定めるもののほか、分別解体等の方法、解体工事に要する費用その他の主務省令で定める事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

「建設業法第19条第1項に定めるもののほか」と明記されています。15項目に上乗せされます。

分別解体等の方法、解体工事に要する費用、再資源化等をする施設の名称と所在地、再資源化等に要する費用——といった項目が加わります。

対象建設工事に当たるかどうかは、工事の種類と規模で決まります。 リフォームがすべて該当するわけではありませんが、該当するかどうかを確認する手順を持っていないと、気づかずに漏らします。


特商法の書面と、1枚にまとめられるか

訪問販売なら、特定商取引法の書面も必要です。「2枚に分けるのか、1枚で済むのか」は当然の疑問だと思います。

結論から書くと、はっきりしません。

禁止する規定は見当たりません。 特商法にも建設業法にも、「他法の書面と兼ねてはならない」という定めを見つけられませんでした。

業界の標準書式は、事実上一体で作られています。 住宅リフォーム推進協議会の書式は、建設業法19条の項目(施工しない日・時間帯、保証保険、石綿調査など)を織り込みつつ、クーリング・オフについても記述しています。

ただし、「1枚で足りる」と明言した公的資料は見つけられませんでした。

現実的な障害は、体裁のほうです

法律上の可否より、特商法の体裁の要求のほうが実務的な問題になります。

特定商取引法施行規則第6条が、こう定めています。

第2項 書面には、書面の内容を十分に読むべき旨を、赤枠の中に赤字で記載しなければならない。
第3項 書面には、日本産業規格Z八三〇五に規定する八ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いなければならない。

8ポイント以上という要求が、契約書本体にそのまま乗ります。約款を小さな文字で敷き詰める作り方はできません。

なお、正確に書いておきます。 条文が「赤枠の中に赤字」と明示しているのは「書面の内容を十分に読むべき旨」です。クーリング・オフに関する事項も赤枠赤字という説明は消費者庁の特定商取引法ガイドにありますが、その直接の条文根拠を私は特定できませんでした。実務としては消費者庁の説明に従うのが安全ですが、根拠の所在は分けて理解しておいたほうがよいと思います。

実装してみて分かったこと

「工事内容」を自由記述にしませんでした

第1号の「一式」問題への対策です。自由記述の欄を1つ置くと、必ず「一式」と書かれます。

工事の種別、施工する箇所、使用する材料と数量を、それぞれ別の欄として持たせました。 埋めなければ次に進めません。

様式が「一式」を許さない形になっていることが、いちばん効きます。

条件付きの記載事項に「定めなし」を用意しました

第4号・第5号・第10号・第13号は「定めをするときは、その内容」という構造です。空欄のままだと、「定めがない」のか「書き忘れた」のかが分かりません。

「定めなし」を明示的に選ぶ形にしました。後から見返したときに、判断した記録として残ります。

算定方法の欄を、協議を前提とした定型文にしました

第8号の改正に対応したものです。国土交通省が「協議を前提としない規定は19条違反」と明言しているので、「変更しない」と書けてしまう自由記述にはしませんでした。

協議のうえで変更する、という前提を定型文に組み込み、算定の基準(数量の増減分に単価を乗ずる、等)を選ぶ形にしています。

変更契約を、独立した文書として持たせました

第19条第2項への対応です。当初は元の契約に「変更履歴」として持たせる設計でしたが、やめました。

条文が求めているのは「変更の内容を書面に記載し、相互に交付」です。履歴の一行では、交付する対象になりません。変更のたびに1つの文書が生成される形にしています。

解体の有無を、最初に聞くようにしました

建設リサイクル法の上乗せがあるためです。契約の入口で解体の有無を確認し、該当する場合は追加の項目が出る分岐にしました。

後から気づく形にすると、契約書を作り直すことになります。


まとめ

  • 条文は第16号までありますが、第16号を受けた省令が見当たらず、国土交通省のガイドライン自身が15項目で説明しています
  • 第4号・第5号・第10号・第13号は「定めをするときは」という条件付き。それ以外は必ず書きます
  • 令和6年12月13日から、第8号に「算定方法」が加わりました。 価格が変動したときにどう計算して変えるのかまで書きます
  • 「変更しない」と書くと、それ自体が19条違反です。国土交通省が明言しています
  • 第6号・第7号にも以前から「算定方法」があります。 3つまとめて見直すのが実務的です
  • 行政が名指しする不備は、「〇〇工事一式」・注文書と請書だけ・着工後の交付・追加工事の口頭処理
  • 条文の構造から抜けやすいのは、第11号(検査と引渡し)・第15号(紛争解決)・第9号(第三者損害)
  • 「署名又は記名押印をして相互に交付」=双方向です。特商法の一方向とは違います
  • 骨格には民間建設工事標準請負契約約款(乙)(個人住宅等の小規模工事向け)と、住宅リフォーム工事標準契約書式(無料PDF)が使えます
  • 解体をともなうなら、建設リサイクル法13条の項目が上乗せされます
  • 特商法の書面と1枚にまとめることを禁じる規定は見当たりませんが、明言した公的資料も見つけられませんでした。 現実の制約は8ポイント以上という体裁の要求です

参照した一次情報


訪問販売の契約実務について、ご相談を承っています。

15項目を様式にどう落とすか、「一式」を防ぐ入力の作り方、変更契約の回し方。実装した立場からお答えできることがあります。インシナックスの実際の画面をご覧いただくこともできます。

お問い合わせ:info@michibikiworks.com

執筆:五十嵐 天導(みちびきworks 代表)

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