電子領収書に印紙は要るのか
PDFやメールで送った領収書と、紙に戻ってしまう場面
PDFやメールで送った領収書は、一般に印紙税の課税文書の作成に当たらないとされています。
印紙税は「文書」にかかる税で、課税されるのは紙の文書を作って相手に渡したときです。国税庁の解説は、領収書をファクシミリや電子メールで送る場合は、実際に文書が交付されないので、印紙税の課税原因は発生しないと説明しています。
ただし、メールで送ったあとに紙の領収書も渡せば、その紙には印紙税がかかります。 そもそも、5万円未満の領収書や、営業に関しない領収書は、紙でも印紙は要りません。
30秒でわかる、この記事の要点
1紙の領収書には、いつ印紙が要るのか
要点売上代金の領収書は、5万円以上で200円から。5万円未満と、営業に関しないものは非課税です。
「領収書をPDFにしてメールで送れば、印紙は要らない」。よく聞く話です。国税庁の資料も、その方向で説明しています。
ただ、紙の領収書にいつ印紙が要るのかを押さえておかないと、電子にした意味があるのかどうかも判断できません。また、電子で送ったつもりでも、紙が1枚混ざれば話が変わります。 そこで、紙の領収書の決まりから順に確かめます。
領収書は、印紙税法の第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)に当たります。国税庁のタックスアンサー(No.7105)は、受取書を「その受領事実を証明するために作成し、その支払者に交付する証拠証書」と説明しています。「領収証」「レシート」「預り書」のほか、請求書に「代済」「相済」などと書いたものも含まれます。
5万円未満は、紙でも要らない
記載された受取金額が5万円未満の領収書は、非課税です。
売上代金の領収書の税額は、次のとおりです(No.7105より)。
| 記載された受取金額(売上代金) | 税額 |
|---|---|
| 5万円未満 | 非課税 |
| 5万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円超200万円以下 | 400円 |
| 200万円超300万円以下 | 600円 |
| 300万円超500万円以下 | 1,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 2,000円 |
| 1,000万円を超える場合 | さらに段階があります(No.7141「印紙税額の一覧表」) |
売上代金以外の受取書は、5万円以上なら一律200円です。
消費税額を分けて書けば、税抜の金額で判定する
消費税の課税事業者が、領収書に消費税額を区分して書いた場合、その消費税額は印紙税の記載金額に含めません(No.7124)。税込と税抜の両方が書いてあり、消費税額が計算で分かる場合も同じです。
たとえば税込54,000円(税抜49,091円・消費税4,909円)を区分して書けば、記載金額は5万円未満となり、非課税です。
免税事業者は消費税を課されないので、区分して書いても、その金額は記載金額に含めます。
営業に関しない領収書も要らない
営業に関しない金銭の受取書は、非課税です(No.7105)。公益法人や、商人ではない個人の行為は、営業に当たらないとされています。
2電子で送った領収書は、どう扱われるか
要点国税庁の解説は、領収書を名指しして、電子メールやファクシミリで送る場合は課税原因が発生しないと説明しています。
課税されるのは「紙を作って渡したとき」
印紙税法第2条は、課税の対象を「文書」としています。そして印紙税法基本通達第44条は、「作成」を次のように説明しています。
単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう
領収書のように相手に渡すための文書は、相手に交付したときに作成したことになります。
国税庁の解説:メールやFAXで送れば、課税原因は発生しない
福岡国税局の文書回答(2008年10月24日、注文請書をPDFにしてメールで送った場合)は、国税庁のコミットメントライン契約に関する解説(問2)を引いて、同じ趣旨だとしています。その解説の該当部分は次のとおりです。
請求書や領収書をファクシミリや電子メールにより貸付人に対して提出する場合には、実際に文書が交付されませんから、課税物件は存在しないこととなり、印紙税の課税原因は発生しません。
領収書を名指しして、電子メールやファクシミリで送る場合は課税原因が発生しない、と説明しているわけです。
ここから、PDFの領収書をメールで送る、電子送付のサービスでリンクを送り、相手が画面で確認・保存するといった方法は、一般に課税文書の作成に当たらないとされています。
3電子にしたつもりで、紙に戻ってしまう場面
要点電子と併用しても、紙で作って渡した領収書は通常どおり課税の対象です。
メールで送ったあと、紙の領収書も渡した
福岡国税局の文書回答は、メールで送ったあとに現物を持参するなどして交付した場合は、その現物に印紙税がかかるとしています。「念のため紙でもお渡しします」という運用をすると、その紙は通常どおり課税の対象です。
「紙で再発行してほしい」と頼まれて渡した
電子で送ったあとに、相手から紙での再発行を頼まれることがあります。紙で作って渡せば、その紙は文書です。 5万円以上なら、金額に応じた印紙が要ります。電子で再送できる方法があるなら、そちらで対応するほうが扱いがはっきりします。
店頭では紙、あとから電子、と使い分けた
同じ取引で紙の領収書を渡しているなら、その紙は課税の対象です。電子を併用しても、紙のほうが非課税になるわけではありません。
受け取った側が印刷した場合は
受け取った側が、自分の保存用にPDFを印刷することはよくあります。発行した側が紙を交付したわけではないので、課税の問題にはならないと考えるのが自然です。ただ、この場面を直接答えた国税庁の資料は、確認できた範囲では見つけていません。 気になる場合は、所轄の税務署に確かめてください。
4印紙とは別に確かめること
要点インボイスの記載事項や保存の方法など、印紙税とは別の決まりがあります。
この記事は印紙税だけを扱っています。電子で送った領収書・請求書には、インボイス(適格請求書)としての記載事項や、受け取った側・送った側の保存の方法など、印紙税とは別の決まりがあります。これらの扱いは、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
まとめ
- 領収書は第17号文書。5万円未満、営業に関しないものは、紙でも非課税です
- 消費税の課税事業者が消費税額を区分して書けば、税抜の金額で判定します
- 国税庁の解説は、領収書をファクシミリや電子メールで送る場合は、印紙税の課税原因は発生しないと説明しています
- メールで送ったあとに紙も渡せば、その紙には印紙税がかかります。 紙での再発行にも注意してください
- 受け取った側が印刷する場合を直接答えた国税庁の資料は、確認できませんでした
契約書の印紙については、電子契約に印紙が要らない理由にまとめています。
インシナックスでは、契約を交わした相手に、領収書・請求書もメールで送れます(ショットは1通11円(税込)、ライトは月30通まで含む、スタンダードは送り放題)。くわしくは領収書・請求書の送付のページをご覧ください。
この記事は、PDFや電子メールで送る領収書と印紙税の関係を、国税庁の資料をもとに整理したものです。一般的な情報提供であり、個別の案件についての税務上の助言ではありません。実際の判断は税理士や所轄の税務署にご確認ください。