電子契約のデメリット
導入してから困る8つのことと、それぞれの避け方
デメリットの多くは、運用を決めずに始めたときに表に出ます。
相手が使えない、法律で手順が決まっている契約がある、本人確認が弱いと証拠も弱くなる、紙と混ぜると手間や税金が増える、など導入してから困ることは8つあります。多くは電子という仕組みそのものより、誰に・どの契約を・どう送り・どう残すかを決めないまま始めたときに起きるので、始める前に決めておけば、たいていは避けられます。
ただし、法律で手順が決まっている契約は、決められた手順を踏まないと、電子にしたことが法律上の交付や明示として認められません。また、電子で交わした契約に紙を混ぜると、その紙に印紙税がかかることがあります。
30秒でわかる、この記事の要点
目次
1多くは「運用を決めていないこと」から起きます
要点始める前に、誰に・どの契約を・どう送り・どう残すかを決めておけば、たいていのデメリットは避けられます。
電子契約を売る側の記事は、デメリットを小さく書きがちです。私たちも電子契約システムを作っている側ですが、導入してから困ることは、先に書いておくほうがよいと考えています。
ここに挙げるデメリットの多くは、電子という仕組みそのものより、誰に・どの契約を・どう送り・どう残すかを決めないまま始めたときに表に出ます。裏を返せば、始める前に決めておけば、たいていは避けられます。
| デメリット | 避け方 |
|---|---|
| 相手が使えない、使いたくないことがある | 送る前に確かめる。紙で交わす道を残す |
| 法律で手順が決まっている契約がある | 根拠になる法律を先に確かめる |
| 本人確認が弱いと、証拠も弱くなる | 別の経路の本人確認を重ね、記録が残るサービスを選ぶ |
| なりすましメールや、送り先の間違い | アドレスを確かめ、確認コードはメールとは別の経路で伝える |
| 紙と混ぜると、かえって手間や税金が増える | 最後まで電子で通す |
| 費用が、印紙代の削減を上回ることがある | 印紙代を主な理由にしない。件数に合った料金の形を選ぶ |
| サービスをやめたとき、乗り換えたときの書面の行き先 | 書面と記録を手元にも保存する |
| 社内のルールを作り直す手間 | 送る人・保存先・紙の扱いを先に決める |
2相手が使えない、使いたくないことがある
要点送る前に「電子契約で送ってもよいですか」と確かめ、紙で交わす道も残しておきます。
電子契約は、相手がメールを受け取り、画面で内容を確かめて署名できることが前提です。取引先や顧客によっては、慣れていない、使える端末がない、紙のほうが安心だ、ということがあります。
避け方
- 送る前に「電子契約で送ってもよいですか」と確かめる
- 紙で交わす道を残しておく。 全員を電子にそろえようとしない
訪問販売のように、相手の端末や理解の程度まで確かめる必要がある場面については、ご高齢のお客様に電子交付はできるのかに書きました。
3法律で手順が決まっている契約がある
要点特別の定めがある契約は、決められた手順を踏まないと、電子にしたことが法律上の交付や明示として認められません。
契約は、法令に特別の定めがある場合を除き、書面でなくても成り立ちます(民法第522条第2項)。
裏を返すと、特別の定めがある契約は、決められた手順を踏まないと、電子にしたことが法律上の交付や明示として認められません。
避け方:電子にする契約の根拠になる法律を、先に確かめる。たとえば次の3つです。
| 契約 | 確かめる記事 |
|---|---|
| 訪問販売などの契約書面 | 訪問販売の契約書面は電子化できるのか |
| 建設工事の請負契約 | 使っている電子契約サービスは、建設工事の請負契約に使えますか |
| 労働条件通知書 | 雇用契約書と労働条件通知書は電子にできるのか |
4本人確認が弱いと、証拠も弱くなる
要点誰が合意したのかを後から示せるかどうかは、送るときの本人確認と、記録の残し方にかかっています。
紙の契約では、実印と印鑑証明で本人を確かめることができました。電子契約で、誰が合意したのかを後から示せるかどうかは、送るときの本人確認と、記録の残し方にかかっています。
電子署名法第3条関係のQ&A(2020年9月4日公表、2024年1月9日一部改定)は、サービス事業者の署名鍵で署名する方式について、本人が作った書面だと推定されるには、利用者とサービス事業者の間の本人確認と、事業者内部の処理の両方で、本人だけが行えること(固有性)が十分な水準で求められるとしています。最終的な判断は裁判所です。
避け方
- メールアドレスだけに頼らず、確認コードなど、別の経路の本人確認を重ねる
- 誰が、いつ、どう本人確認をして署名したかが記録に残るサービスを選ぶ
詳しくは電子契約の「立会人型署名」「認定タイムスタンプ」「合意締結証明書」は、それぞれ何を証明しているのかに書きました。
5なりすましメールや、送り先の間違い
要点送る側は送信前にアドレスを確かめ、受け取る側は心当たりのないメールのリンクを開く前に取引先に確かめます。
電子契約はメールで届きます。取引先をかたったメールが届くこともあり得ますし、送る側がアドレスを打ち間違えれば、別の人に契約書が届きます。
避け方
| 立場 | 避け方 |
|---|---|
| 送る側 | 送信前にアドレスを確かめる。確認コードはメールとは別の経路で伝える |
| 受け取る側 | 心当たりのないメールは、リンクを開く前に取引先に確かめる |
手順は電子契約のやり方にまとめました。
6紙と混ぜると、かえって手間や税金が増える
要点電子で交わすと決めた契約は、変更の覚書も含めて、最後まで電子で通します。
「念のため、署名した紙も郵送しておく」。丁寧なつもりの運用ですが、相手に渡した紙は「文書」です。課税文書に当たる契約書なら、その紙に印紙税がかかることがあります。管理も紙と電子の二重になります。
避け方:電子で交わすと決めた契約は、最後まで電子で通す。 変更の覚書も電子で交わす。
7費用が、印紙代の削減を上回ることがある
要点印紙代を導入の主な理由にしないでください。効くのは、郵送の往復や書面の作り直しが減ることのほうです。
「印紙代が浮くから元が取れる」という説明をよく見かけます。ただ、そもそも紙でも印紙が要らない契約(建物の賃貸借、雇用契約など)なら、削減はゼロです。印紙が要る契約でも、1件あたり数百円ということも多く、サービスの利用料のほうが上回ることは珍しくありません。
避け方
- 印紙代を導入の主な理由にしない。効くのは、郵送の往復や書面の作り直しが減ることのほうです
- 件数が少ないうちは、月額固定より、送った通数ごとの料金のほうが合う場合があります
印紙の削減額が実際にどのくらいかは、工事請負契約書の印紙は、電子にすると不要ですで計算しています。
8サービスをやめたとき、乗り換えたときの書面の行き先
要点締結のたびに、書面と記録を手元にもダウンロードして保存しておきます。
締結した書面と合意の記録がサービスの中にしかないと、解約や乗り換えのときに困ります。
避け方
- 締結のたびに、書面と記録を手元にもダウンロードして保存する
- 導入前に、まとめてダウンロードできるかを確かめておく
9社内のルールを作り直す手間
要点紙の契約で決めていた「誰が押印してよいか」「どこに保管するか」は、電子では別の形で決め直す必要があります。
紙の契約で決めていた「誰が押印してよいか」「どこに保管するか」は、電子では別の形で決め直す必要があります。
避け方:始める前に、最低限これだけは決めておく。
- 誰が会社として送ってよいかアカウントと権限
- どこに保存するかフォルダの決まり、名前の付け方
- 紙で届いた契約をどう扱うか紙のまま保管するか
10それでも電子にする理由
要点電子にしてよかったと感じやすいのは、郵送の往復がなくなり、送った・見た・署名したの記録が残ることなどです。
デメリットを並べましたが、電子にしてよかったと感じやすいのは、次のような点です。
- 郵送の往復がなくなる。 締結までの日数が短くなります
- 書面の作り直しが減る。 金額や日付が変わっても、データの修正で済みます
- 送った・見た・署名したの記録が残る。 「届いていない」「見ていない」という行き違いを減らせます
- 保管場所を取らない。 探すのも速くなります
まとめ
- 電子契約のデメリットの多くは、運用を決めずに始めたときに表に出ます
- 相手の事情と、法律で手順が決まっている契約を、先に確かめる
- 証拠の強さは、本人確認と記録の残し方で決まる部分が大きい
- 紙を混ぜない。 混ぜると印紙税や二重管理が生まれます
- 印紙代を導入理由にしない。 件数に合った料金の形を選ぶ
- 締結した書面と記録は、手元にも保存する
インシナックスでは、月額0円・1通110円(税込)のショットから始められます。
この記事は、電子契約を導入する前に知っておきたいデメリットと、その避け方を整理したものです。一般的な情報提供であり、個別の契約についての法的な助言ではありません。