インシナックス
電子契約の基本

電子契約のデメリット

導入してから困る8つのことと、それぞれの避け方

執筆 五十嵐 天導(みちびきworks 代表) 公開 2026年10月17日 / 更新 2026年10月27日 要点だけなら30秒

まず、答え

デメリットの多くは、運用を決めずに始めたときに表に出ます。

相手が使えない、法律で手順が決まっている契約がある、本人確認が弱いと証拠も弱くなる、紙と混ぜると手間や税金が増える、など導入してから困ることは8つあります。多くは電子という仕組みそのものより、誰に・どの契約を・どう送り・どう残すかを決めないまま始めたときに起きるので、始める前に決めておけば、たいていは避けられます。

ただし、法律で手順が決まっている契約は、決められた手順を踏まないと、電子にしたことが法律上の交付や明示として認められません。また、電子で交わした契約に紙を混ぜると、その紙に印紙税がかかることがあります。

30秒でわかる、この記事の要点

目次
  1. まず、答え
  2. 1. 多くは「運用を決めていないこと」から起きます
  3. 2. 相手が使えない、使いたくないことがある
  4. 3. 法律で手順が決まっている契約がある
  5. 4. 本人確認が弱いと、証拠も弱くなる
  6. 5. なりすましメールや、送り先の間違い
  7. 6. 紙と混ぜると、かえって手間や税金が増える
  8. 7. 費用が、印紙代の削減を上回ることがある
  9. 8. サービスをやめたとき、乗り換えたときの書面の行き先
  10. 9. 社内のルールを作り直す手間
  11. 10. それでも電子にする理由
  12. まとめ

1多くは「運用を決めていないこと」から起きます

要点始める前に、誰に・どの契約を・どう送り・どう残すかを決めておけば、たいていのデメリットは避けられます。

電子契約を売る側の記事は、デメリットを小さく書きがちです。私たちも電子契約システムを作っている側ですが、導入してから困ることは、先に書いておくほうがよいと考えています。

ここに挙げるデメリットの多くは、電子という仕組みそのものより、誰に・どの契約を・どう送り・どう残すかを決めないまま始めたときに表に出ます。裏を返せば、始める前に決めておけば、たいていは避けられます。

デメリット避け方
相手が使えない、使いたくないことがある送る前に確かめる。紙で交わす道を残す
法律で手順が決まっている契約がある根拠になる法律を先に確かめる
本人確認が弱いと、証拠も弱くなる別の経路の本人確認を重ね、記録が残るサービスを選ぶ
なりすましメールや、送り先の間違いアドレスを確かめ、確認コードはメールとは別の経路で伝える
紙と混ぜると、かえって手間や税金が増える最後まで電子で通す
費用が、印紙代の削減を上回ることがある印紙代を主な理由にしない。件数に合った料金の形を選ぶ
サービスをやめたとき、乗り換えたときの書面の行き先書面と記録を手元にも保存する
社内のルールを作り直す手間送る人・保存先・紙の扱いを先に決める

2相手が使えない、使いたくないことがある

要点送る前に「電子契約で送ってもよいですか」と確かめ、紙で交わす道も残しておきます。

電子契約は、相手がメールを受け取り、画面で内容を確かめて署名できることが前提です。取引先や顧客によっては、慣れていない、使える端末がない、紙のほうが安心だ、ということがあります。

避け方

  • 送る前に「電子契約で送ってもよいですか」と確かめる
  • 紙で交わす道を残しておく。 全員を電子にそろえようとしない

訪問販売のように、相手の端末や理解の程度まで確かめる必要がある場面については、ご高齢のお客様に電子交付はできるのかに書きました。

3法律で手順が決まっている契約がある

要点特別の定めがある契約は、決められた手順を踏まないと、電子にしたことが法律上の交付や明示として認められません。

根拠

契約は、法令に特別の定めがある場合を除き、書面でなくても成り立ちます(民法第522条第2項)。

裏を返すと、特別の定めがある契約は、決められた手順を踏まないと、電子にしたことが法律上の交付や明示として認められません。

避け方:電子にする契約の根拠になる法律を、先に確かめる。たとえば次の3つです。

4本人確認が弱いと、証拠も弱くなる

要点誰が合意したのかを後から示せるかどうかは、送るときの本人確認と、記録の残し方にかかっています。

紙の契約では、実印と印鑑証明で本人を確かめることができました。電子契約で、誰が合意したのかを後から示せるかどうかは、送るときの本人確認と、記録の残し方にかかっています。

根拠

電子署名法第3条関係のQ&A(2020年9月4日公表、2024年1月9日一部改定)は、サービス事業者の署名鍵で署名する方式について、本人が作った書面だと推定されるには、利用者とサービス事業者の間の本人確認と、事業者内部の処理の両方で、本人だけが行えること(固有性)が十分な水準で求められるとしています。最終的な判断は裁判所です。

避け方

  • メールアドレスだけに頼らず、確認コードなど、別の経路の本人確認を重ねる
  • 誰が、いつ、どう本人確認をして署名したかが記録に残るサービスを選ぶ

詳しくは電子契約の「立会人型署名」「認定タイムスタンプ」「合意締結証明書」は、それぞれ何を証明しているのかに書きました。

5なりすましメールや、送り先の間違い

要点送る側は送信前にアドレスを確かめ、受け取る側は心当たりのないメールのリンクを開く前に取引先に確かめます。

電子契約はメールで届きます。取引先をかたったメールが届くこともあり得ますし、送る側がアドレスを打ち間違えれば、別の人に契約書が届きます。

避け方

立場避け方
送る側送信前にアドレスを確かめる。確認コードはメールとは別の経路で伝える
受け取る側心当たりのないメールは、リンクを開く前に取引先に確かめる

手順は電子契約のやり方にまとめました。

6紙と混ぜると、かえって手間や税金が増える

要点電子で交わすと決めた契約は、変更の覚書も含めて、最後まで電子で通します。

注意

「念のため、署名した紙も郵送しておく」。丁寧なつもりの運用ですが、相手に渡した紙は「文書」です。課税文書に当たる契約書なら、その紙に印紙税がかかることがあります。管理も紙と電子の二重になります。

避け方:電子で交わすと決めた契約は、最後まで電子で通す。 変更の覚書も電子で交わす。

→ 電子契約に印紙が要らない理由

7費用が、印紙代の削減を上回ることがある

要点印紙代を導入の主な理由にしないでください。効くのは、郵送の往復や書面の作り直しが減ることのほうです。

「印紙代が浮くから元が取れる」という説明をよく見かけます。ただ、そもそも紙でも印紙が要らない契約(建物の賃貸借、雇用契約など)なら、削減はゼロです。印紙が要る契約でも、1件あたり数百円ということも多く、サービスの利用料のほうが上回ることは珍しくありません。

避け方

  • 印紙代を導入の主な理由にしない。効くのは、郵送の往復や書面の作り直しが減ることのほうです
  • 件数が少ないうちは、月額固定より、送った通数ごとの料金のほうが合う場合があります

印紙の削減額が実際にどのくらいかは、工事請負契約書の印紙は、電子にすると不要ですで計算しています。

8サービスをやめたとき、乗り換えたときの書面の行き先

要点締結のたびに、書面と記録を手元にもダウンロードして保存しておきます。

締結した書面と合意の記録がサービスの中にしかないと、解約や乗り換えのときに困ります。

避け方

  • 締結のたびに、書面と記録を手元にもダウンロードして保存する
  • 導入前に、まとめてダウンロードできるかを確かめておく

9社内のルールを作り直す手間

要点紙の契約で決めていた「誰が押印してよいか」「どこに保管するか」は、電子では別の形で決め直す必要があります。

紙の契約で決めていた「誰が押印してよいか」「どこに保管するか」は、電子では別の形で決め直す必要があります。

避け方:始める前に、最低限これだけは決めておく。

  • 誰が会社として送ってよいかアカウントと権限
  • どこに保存するかフォルダの決まり、名前の付け方
  • 紙で届いた契約をどう扱うか紙のまま保管するか

10それでも電子にする理由

要点電子にしてよかったと感じやすいのは、郵送の往復がなくなり、送った・見た・署名したの記録が残ることなどです。

デメリットを並べましたが、電子にしてよかったと感じやすいのは、次のような点です。

  • 郵送の往復がなくなる。 締結までの日数が短くなります
  • 書面の作り直しが減る。 金額や日付が変わっても、データの修正で済みます
  • 送った・見た・署名したの記録が残る。 「届いていない」「見ていない」という行き違いを減らせます
  • 保管場所を取らない。 探すのも速くなります

まとめ

  • 電子契約のデメリットの多くは、運用を決めずに始めたときに表に出ます
  • 相手の事情と、法律で手順が決まっている契約を、先に確かめる
  • 証拠の強さは、本人確認と記録の残し方で決まる部分が大きい
  • 紙を混ぜない。 混ぜると印紙税や二重管理が生まれます
  • 印紙代を導入理由にしない。 件数に合った料金の形を選ぶ
  • 締結した書面と記録は、手元にも保存する

インシナックスでは、月額0円・1通110円(税込)のショットから始められます。

この記事は、電子契約を導入する前に知っておきたいデメリットと、その避け方を整理したものです。一般的な情報提供であり、個別の契約についての法的な助言ではありません。

五十嵐 天導(いがらし たかみち)

みちびきworks 代表。太陽光発電と蓄電池の営業を13年、そのうち8年は副社長として経営にたずさわる。 特定商取引法の要件を満たせる電子契約が見当たらなかったことから、電子契約システム「インシナックス」を自分で作った。

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