電子契約のやり方
送る側と受け取る側、それぞれの手順と、始める前に決めておくこと
用意して、送り、相手が署名し、保存する。紙とほとんど同じ流れです。
電子契約は、契約書のデータをインターネットで送り、相手に内容を確かめて署名してもらう方法です。違うのは、印刷・押印・郵送・返送がなくなることです。契約は、法令に特別の定めがある場合を除き、書面でなくても成り立ちます(民法第522条第2項)。
ただし、訪問販売・建設工事・労働条件通知書などは、承諾や希望など、決められた手順が必要です。また、締結したあとは書面を直せないので、金額や日付は送る前にもう一度確かめてください。
30秒でわかる、この記事の要点
1電子契約で何をするのか
要点契約書を用意し、送り、相手が確かめて署名し、双方が保存します。違うのは、印刷・押印・郵送・返送がなくなることです。
電子契約は、紙の契約書を郵送したり持参したりする代わりに、契約書のデータをインターネットで送り、相手に内容を確かめて署名してもらう方法です。
この記事では、送る側の手順と、受け取る側の手順を分けて書きます。「取引先から電子契約のメールが届いたけれど、どうすればいいのか」という方は、下の「受け取る側の手順」の節から読んでください。
流れは、紙の契約とほとんど同じです。
- 契約書を用意する(PDFなど)
- 相手に送る
- 相手が内容を確かめて、署名する
- 締結した書面を、双方が保存する
違うのは、印刷・押印・郵送・返送がなくなることです。
書面でなくても、契約は成り立ちます
民法第522条第2項は、こう定めています。
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
紙の契約書がなくても、契約は合意で成り立ちます。電子契約は、その合意の内容と経緯を、データで記録に残す方法です。
ただし、「法令に特別の定めがある場合を除き」とあるとおり、決まった手順が必要な契約もあります。次の節で触れます。
2始める前に決めておくこと
要点どの契約を電子にするか、相手が電子で受け取ってよいか、社内で誰が送るか、締結した書面をどこに保存するかを決めておきます。
1. どの契約を電子にするか
多くの契約は、そのまま電子にできます。ただ、法律で、書面の交付や相手の承諾が決められている契約は、決められた手順を踏む必要があります。例を挙げます。
| 契約 | 決められていること | 詳しく |
|---|---|---|
| 訪問販売などの契約書面(特定商取引法) | 相手の承諾を得る手順が細かく決められています | 訪問販売の契約書面は電子化できるのか |
| 建設工事の請負契約(建設業法) | 相手の承諾と、技術的な基準があります | 使っている電子契約サービスは、建設工事の請負契約に使えますか |
| 労働条件通知書(労働基準法) | 本人の希望が必要です | 雇用契約書と労働条件通知書は電子にできるのか |
ここに挙げたもの以外にも、個別の法律で決まりがある契約はあります。迷ったら、その契約の根拠になる法律を確かめてください。
2. 相手が電子で受け取ってよいか
法律で承諾が求められていない契約でも、相手が電子契約に慣れていないことはあります。いきなりメールを送るより、「電子契約で送ってもよいですか」と一言確かめておくと、行き違いが起きにくくなります。
3. 社内で誰が送るか
紙の契約で「誰が押印してよいか」を決めていたのと同じように、誰が会社として送ってよいかを決めておきます。電子契約サービスの多くは、利用者ごとにアカウントを分けられます。
4. 締結した書面をどこに保存するか
締結した書面と合意の記録を、どこに、どう保存するかを決めておきます。サービスの中に残すだけでなく、手元にもダウンロードしておくと安心です。
3送る側の手順
要点送る前の確認、本人確認の方法、締結後の保存が大事です。
サービスによって画面は違いますが、手順はおおむね次のとおりです。
1. 契約書のPDFを用意する
いつもの契約書の書式のままで構いません。 WordやExcelで作っている契約書は、PDFに書き出します。
金額や日付など、送る前にもう一度確かめます。締結したあとは、書面を直せないためです。
2. 電子契約サービスにアップロードする
PDFをサービスに読み込ませます。よく使う書式は、テンプレートとして登録できるサービスもあります。
3. 署名欄・入力欄を置く
相手に署名してもらう場所や、相手に書き込んでもらう欄(住所、日付など)を、画面上で配置します。
4. 相手と、本人確認の方法を決める
相手の氏名とメールアドレスを入れます。サービスによっては、メールとは別の経路で伝える確認コードなどで、本人確認を重ねることができます。
ここで決めた本人確認の方法は、あとで「誰が合意したのか」を示す材料になります。詳しくは電子契約の「立会人型署名」「認定タイムスタンプ」「合意締結証明書」は、それぞれ何を証明しているのかに書きました。
5. 送る
送信すると、相手にメールが届きます。確認コードを使う場合は、メールとは別の方法(電話や、事前に伝えておくなど)で相手に伝えます。
6. 締結後、書面と記録を保存する
相手が署名すると、契約が締結されます。締結済みのPDFと、合意の記録(合意締結証明書など、サービスによって呼び名は違います)をダウンロードして保存します。
4受け取る側の手順
要点まず送り主を確かめ、署名の前に疑問を解消し、締結後は控えを必ず保存します。
取引先から電子契約のメールが届いた場合の流れです。
1. 送り主を確かめる
まず、本当にその取引先から届いたものかを確かめます。電子契約のメールをかたった、なりすましメールもあり得ます。
- 送り主の名前と、契約の内容に心当たりがあるか
- 事前に「電子契約で送ります」と聞いていたか
少しでも不審な点があれば、メールのリンクを開く前に、取引先に電話などで確かめてください。
2. リンクを開き、本人確認をする
メールのリンクを開きます。確認コードを求められたら、取引先から伝えられたコードを入れます。
多くのサービスでは、受け取る側がアカウントを作ったり、専用のアプリを入れたりする必要はありません。
3. 内容を確かめる
紙の契約書と同じように、最後まで読みます。 金額、期間、支払いの条件などに疑問があれば、署名する前に取引先に問い合わせます。
4. 署名する
内容に問題がなければ、画面の指示に従って署名します。
5. 控えを保存する
締結すると、締結済みの書面がメールで届いたり、画面からダウンロードできたりします。必ず手元に保存してください。 紙の契約書の控えと同じ扱いです。
5よくあるつまずき
要点メールが届かない原因は、メールアドレスの打ち間違いがいちばん多く、締結後に直したいときは変更の契約を新たに交わします。
メールが届かない
- メールアドレスの打ち間違いがいちばん多い原因です
- 相手側の迷惑メールのフォルダに入っていることがあります
送ったあとに「届きましたか」と一言確かめると、待ちぼうけを防げます。
締結したあとに、直したくなった
締結した書面は、変わっていないことを示すために、直せない仕組みになっています。内容を変えたいときは、変更の契約(覚書など)を新たに交わします。
一部を紙で交わした
電子で交わしたあと、念のため署名した紙も送る、といった運用をすると、その紙には印紙税がかかることがあります。 → 電子契約に印紙が要らない理由
PDFを開くと「署名の完全性は不明です」と出る
署名が壊れているという意味ではありません。表示の意味と確かめ方は、電子署名の確認方法にまとめています。
まとめ
- 電子契約は、契約書を用意する → 送る → 相手が確かめて署名する → 保存するという流れ。紙とほとんど同じです
- 契約は、法令に特別の定めがある場合を除き、書面でなくても成り立ちます(民法第522条第2項)
- 訪問販売・建設工事・労働条件通知書などは、承諾や希望など、決められた手順が必要です
- 送る側は、送る前の確認と、本人確認の方法、締結後の保存が大事です
- 受け取る側は、送り主を確かめること、署名の前に疑問を解消すること、控えを保存することが大事です
- 締結後に内容を変えたいときは、変更の契約を新たに交わします
インシナックスでは、お手元の契約書のPDFをアップロードして送れます。相手方はアプリのインストールも電子証明書も不要で、届いたリンクを開いて確認コードを入れ、署名します。
この記事は、電子契約を初めて使う方に向けて、送る側と受け取る側それぞれの手順を整理したものです。一般的な情報提供であり、個別の契約についての法的な助言ではありません。