電子契約の「立会人型署名」「認定タイムスタンプ」「合意締結証明書」は、それぞれ何を証明しているのか
電子署名・タイムスタンプ・合意締結証明書は、それぞれ別のことを証明しています。
契約の証拠として知りたいのは、誰が、いつ、そしてその後、変わっていないかです。電子署名は変わっていないことと誰の意思で付けられたか、認定タイムスタンプはその時刻に存在しそれ以降変わっていないこと、合意締結証明書は誰が・いつ・どうやって本人確認をして合意したかを担います。
ただし、立会人型では、PDFの署名の名義は当事者ではなくサービス事業者です。「誰と誰の、どの契約なのか」は、署名を見ても分かりません。 それを示すのは、契約書の本文と合意締結証明書です。
30秒でわかる、この記事の要点
目次
13つは、それぞれ別のことを担っています
要点どれも「契約の証拠」のように見えますが、証明している中身は、それぞれ違います。
電子契約で交わしたPDFには、たいてい3つのものが付いています。電子署名、タイムスタンプ、そして合意締結証明書(サービスによって呼び名は違います)です。
どれも「契約の証拠」のように見えますが、証明している中身は、それぞれ違います。 ここを混同すると、「署名があるから、誰が合意したかも分かるはず」といった思い違いが起きます。
契約の証拠として知りたいことは、大きく3つです。誰が、いつ、そしてその後、変わっていないか。
| もの | 担っていること |
|---|---|
| 電子署名 | その書面が、署名された後に変わっていないこと。そして、誰の意思で付けられたものか |
| 認定タイムスタンプ | その時刻に書面が存在していたこと。そして、それ以降変わっていないこと |
| 合意締結証明書 | 誰が、いつ、どうやって本人確認をして合意したかの記録 |
順に見ていきます。
2電子署名と「立会人型」
要点立会人型の署名がどれだけ強い証拠になるかは、署名そのものより、その前後の本人確認と記録の残し方で決まる部分が大きいです。
電子署名法の「電子署名」
電子署名法第2条は、電子署名を、電子データに対して行われる措置で、次の2つを満たすものとしています。
- その情報が、措置を行った者が作成したものであることを示すためのものであること
- その情報について改変が行われていないかどうかを確認できるものであること
「立会人型」は、誰の署名なのか
電子契約サービスには、契約の当事者がそれぞれ自分の電子証明書で署名する方式(当事者型)と、当事者の指示を受けて、サービス事業者が自分の署名鍵で署名する方式があります。後者は「立会人型」「事業者署名型」と呼ばれます。
立会人型だと、PDFに付いている署名の名義は、当事者ではなくサービス事業者です。それでも当事者の電子署名と言えるのか。
総務省・法務省・経済産業省が、2020年7月17日にQ&Aで答えています。
- 「措置を行った者」に当たるかどうかは、物理的に誰が操作したかではなく、その措置を誰の意思で行ったかで判断する
- サービス事業者の意思が入る余地がなく、利用者の意思だけに基づいて機械的に暗号化等が行われていると認められれば、利用者を「措置を行った者」と評価できる
- 利用者が送信した事実や日時などの付随情報も含めて、全体を1つの措置ととらえることもできる
「本人が作った」と推定されるには
電子署名法第3条は、本人による一定の電子署名が行われた電子文書は、真正に成立したもの(本人の意思で作られたもの)と推定すると定めています。
立会人型でこの推定が働くかについては、2020年9月4日に公表され、2024年1月9日に一部改定された第3条関係のQ&Aがあります。
- 本人だけが行えるものであること(固有性)が求められる
- 固有性は、①利用者とサービス事業者の間のプロセス(本人確認・認証)と、②それを受けたサービス事業者内部のプロセス(鍵の管理、記録の保存など)の両方で十分な水準が必要
- 本人確認の例として二要素認証が挙がっているが、二要素認証が必須というわけではない
- 最終的な判断は、個別の事案ごとに裁判所に委ねられる
つまり、立会人型の署名が証拠としてどれだけ強いかは、署名そのものより、その前後の本人確認と記録の残し方で決まる部分が大きい、ということです。
3認定タイムスタンプ
要点タイムスタンプは、時刻を第三者が保証する仕組みです。認定を受けた事業者は、総務省の一覧で確かめられます。
何を証明するのか
総務省は、タイムスタンプを「ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術」と説明しています。
署名に時刻が書いてあっても、その時刻がサービス事業者のサーバーの時計なら、後から書き換えられていないことを第三者に示すのは簡単ではありません。タイムスタンプは、時刻を第三者が保証するための仕組みです。
「認定」とは
タイムスタンプには、総務大臣による認定制度があります(時刻認証業務の認定に関する規程、令和3年総務省告示第146号)。
認定を受けた事業者とサービスは、総務省のページに一覧で載っています。 電子契約サービスが「認定タイムスタンプ」と書いていたら、どの事業者のものかを確かめ、一覧と照らし合わせることができます。
4合意締結証明書
要点法律の用語ではなく、サービスごとの呼び名です。立会人型では、誰の合意かを示す中心になります。
法律の用語ではありません
「合意締結証明書」は、電子署名法などで定められた用語ではありません。サービスごとの呼び名で、「締結証明書」「監査証跡」「操作履歴」などと呼ぶサービスもあります。
中身もサービスによって違いますが、多くは誰が、いつ、どうやって本人確認をして、どの操作をしたかを、時刻付きで記録したものです。
なぜ立会人型で大事なのか
立会人型では、PDFの署名の名義はサービス事業者です。「誰と誰の、どの契約なのか」は、署名を見ても分かりません。 それを示すのが、契約書の本文と、この証明書です。
前の節で見たとおり、第3条の推定についても、本人確認のプロセスが問われます。その本人確認をどうしたかが残っているのも、この証明書です。
確かめておきたい項目
使っているサービスの証明書に、次のことが載っているかを見ておくとよいと思います。
- 署名した人氏名、メールアドレスなど
- 本人確認の方法確認コード、二要素認証など
- 各操作の日時送信、閲覧、署名、締結
- どの書面についての記録か書面の照合値など、PDFと結び付ける情報
5PDFを開いたときに見えるもの
要点Adobe Acrobat Reader の署名パネルに、署名やタイムスタンプの情報が表示されます。
Adobe Acrobat Reader で電子契約のPDFを開くと、署名パネルに署名やタイムスタンプの情報が表示されます。「署名の完全性は不明です」と出ることもあります。
表示の意味と確認の手順は、電子署名の確認方法にまとめています。
6電子契約サービスを選ぶときに確かめること
要点署名の方式、タイムスタンプの認定、証明書に載る中身、保存の4点を確かめます。
- 署名の方式当事者型か、立会人型か
- タイムスタンプ認定を受けたものか。どの事業者のものか
- 証明書合意の記録に、何が載るか(上の4項目)
- 保存書面と証明書を、まとめて手元に保存できるか
インシナックスでは、アマノ株式会社の認定タイムスタンプと合意締結証明書を付けています。
まとめ
- 電子契約のPDFに付く3つは、それぞれ別のことを証明しています
- 電子署名は、改変されていないことと、誰の意思による措置かを示すもの。立会人型でも、利用者の意思だけに基づいて機械的に行われていれば、利用者の署名と評価できるとされています(2020年7月のQ&A)
- 「本人が作った」と推定されるには、本人確認と事業者内部の両方のプロセスで固有性が要ります。最終判断は裁判所です(第3条関係Q&A)
- 認定タイムスタンプは、その時刻に存在し、それ以降変わっていないことを第三者が保証するもの。認定事業者は総務省の一覧で確かめられます
- 合意締結証明書は法律の用語ではなく、誰が・いつ・どう本人確認をして合意したかの記録。立会人型では、誰の合意かを示す中心になります
この記事は、電子契約で使われる電子署名・タイムスタンプ・合意締結証明書の役割を、電子署名法のQ&Aと総務省の資料をもとに整理したものです。一般的な情報提供であり、個別の案件についての法的な助言ではありません。