建設業法の改正で何が変わった?【2026年版】
2024年12月と2025年12月の施行を、見積り・契約の実務で整理
建設業法の改正は、2025年12月12日に完全施行されました。見積り・契約の場面で、受注者側にも新しい禁止が加わっています。
2024年6月に公布された改正法(令和6年法律第49号)は、段階的に施行されました。最後の2025年12月12日の施行で、著しく低い労務費などによる見積りの禁止、受注者による原価割れ契約・工期ダンピングの禁止、材料費・労務費などを書いた見積書の作成(努力義務)などが始まりました。国土交通省のガイドラインも2026年1月に改訂されています。
ただし、条文の番号も動いています。見積条件の提示と見積期間は、第20条第4項から第3項に変わりました。古いひな形や社内資料の条文番号は、見直しが必要です。
30秒でわかる、この記事の要点
1改正の全体像
要点2024年6月14日公布の改正法が、3段階で施行され、2025年12月12日に完全施行されました。
改正法は「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第49号)で、2024年6月14日に公布されました。国土交通省の資料によると、施行は3段階です。
| 施行日 | 主な内容 |
|---|---|
| 2024年9月1日 | 改正の一部(最初の段階) |
| 2024年12月13日 | 契約書の法定記載事項の追加、価格転嫁協議の円滑化、監理技術者等の専任義務の合理化、ICT活用・処遇確保の努力義務など |
| 2025年12月12日(完全施行) | 受注者の原価割れ契約・工期ダンピングの禁止、見積書に書くべき事項の明記、著しく低い見積りの禁止、発注者への勧告・公表など |
改正の背景として国土交通省は、建設業の賃金が全産業より低く労働時間が長いこと、重層下請や総価一式の契約慣行のなかで適正な労務費(賃金の原資)が確保されていないことを挙げています。
この記事では、契約と見積りの実務に影響が大きい2回目と3回目を中心に整理します。
22025年12月12日の施行で変わったこと
要点見積書の中身と、受注者側の禁止が加わりました。条文番号もここで動いています。
国土交通省の報道発表(2025年11月14日)と、建設業法令遵守ガイドライン(第12版・2026年1月)をもとにまとめます。
| 何が変わったか | 誰に | 内容 |
|---|---|---|
| 労務費に関する基準 | 業界全体 | 中央建設業審議会が適正な労務費の目安を示す(2025年12月2日決定) |
| 材料費等記載見積書 | 見積書を出す側 | 材料費・労務費・法定福利費・安全衛生経費・建設業退職金共済掛金・必要な作業日数を書いた見積書を作るよう努める(第20条第1項) |
| 見積りの考慮 | 見積書を受け取る側 | 示された内容を考慮するよう努める(第20条第4項) |
| 著しく低い見積りの禁止 | 見積書を出す側 | 通常必要な材料費等を著しく下回る見積りをしてはならない(第20条第2項) |
| 変更要求の禁止 | 見積書を受け取る側 | 材料費等が著しく低くなるような変更を求めてはならない(第20条第6項) |
| 原価割れ契約の禁止 | 受注者にも拡大 | 総価として原価に満たない金額での契約を、受注者にも禁止 |
| 工期ダンピングの禁止 | 注文者・受注者 | 通常必要な期間より著しく短い工期での契約を禁止 |
| 勧告・公表 | 発注者 | 見積書の金額を著しく下回る金額で契約した発注者に、国土交通大臣などが勧告・公表できる。対象は請負代金500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の契約(建設業法施行令第6条の2) |
見積条件の提示と見積期間の条文は、第20条第3項になりました。 以前は第20条第4項でした。見積期間の日数そのもの(500万円未満は1日以上、5,000万円未満は10日以上、5,000万円以上は15日以上)は変わっていません。くわしくは建設業法の見積期間は何日?にまとめました。
「著しく下回る」かどうかは、地域性や工事の内容などを総合的に見て個別に判断されます。ガイドラインは、労務費が最低賃金を下回る場合は著しい乖離に当たるとしています。
32024年12月13日の施行で変わったこと
要点契約書に書く事項が増え、資材高騰などのリスクを契約前に伝えて協議するルールができました。
国土交通省の報道発表(2024年12月6日)は、この施行の主な内容として次のものを挙げています。
- 契約書の法定記載事項の追加工事の請負契約書に書くべき事項が増えました。ひな形の見直しが必要です
- 価格転嫁協議の円滑化資材の価格高騰などの「おそれ」を、契約の前に通知し、変更の協議につなげるルール(第20条の2)
- 監理技術者等の専任義務の合理化請負代金1億円未満(建築一式工事は2億円未満)の工事で、情報通信技術で現場の状況を確認できる場合などに、2現場まで兼務できる
- 営業所技術者等の職務の合理化請負代金1億円未満(建築一式工事は2億円未満)の工事で、1現場まで兼務できる
- 処遇確保の努力義務建設業者に、労働者の適正な処遇の確保を努力義務として課す
- 情報通信技術の活用の努力義務現場管理の効率化
価格転嫁の協議ルール(第20条の2)は、建設業法令遵守ガイドライン(第12版)で次のように整理されています。
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 第1項 | 注文者(元請)から受注者(下請)へ:地中の状態や周辺環境など、工期や代金に影響する事象の情報を契約前に通知する |
| 第2項 | 受注者から注文者へ:主要な資機材の供給不足・価格高騰、労務の供給不足・価格高騰の「おそれ」の情報を、契約前に通知する |
| 第3項 | 通知した事象が起きたとき、受注者は請負代金や工期の変更の協議を申し出られる |
| 第4項 | 申出を受けた注文者は、誠実に協議に応じる |
受注者からの「おそれ」の通知には、資機材の種類、価格の基準日、情報源などの根拠を示す必要があり、口頭だけの情報は根拠として認められないとされています(発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン)。
4実務で見直すもの
要点見積書の様式、見積りの依頼の仕方、契約書のひな形、通知と協議の記録の4つです。
- 見積書の様式材料費・労務費・法定福利費・安全衛生経費・建設業退職金共済掛金・必要な作業日数の欄があるか(第20条第1項は努力義務)
- 見積りの依頼の仕方工事の内容を書面かメール等で示し、予定価格に応じた見積期間を置いているか(第20条第3項)
- 契約書のひな形2024年12月の法定記載事項の追加に合っているか。条文番号が古いままになっていないか
- 「おそれ」の通知と協議の記録資材高騰などの通知を、根拠つきで書面やメール等で残しているか(第20条の2)
- 工期の決め方通常必要な期間より著しく短い工期になっていないか。「工期に関する基準」(2024年3月27日 中央建設業審議会決定)を参考にしているか
今回の改正は、どれも「何を示し、何を伝え、どう協議したか」を後から示せるかどうかが問われます。見積条件の提示、見積期間、「おそれ」の通知、変更の協議。電話と口頭で済ませていると、記録が残りません。書面かメールでやりとりし、双方が保管しておく運用に切り替えておくと安心です。
まとめ
- 改正法(令和6年法律第49号)は3段階で施行され、2025年12月12日に完全施行
- 2025年12月:著しく低い見積りの禁止、材料費等記載見積書の作成(努力義務)、受注者の原価割れ契約・工期ダンピングの禁止、発注者への勧告・公表
- 2024年12月:契約書の法定記載事項の追加、価格転嫁の協議ルール(第20条の2)、現場技術者の専任の合理化
- 見積条件の提示・見積期間の条文は第20条第4項から第3項に。日数は変わっていない
- 見直すのは、見積書の様式・見積りの依頼の仕方・契約書のひな形・通知と協議の記録
契約書に書くべき事項は建設業法19条の記載事項を、リフォーム契約書に落とすに、建設工事の請負契約を電子で交わすときの要件は使っている電子契約サービスは、建設工事の請負契約に使えますかにまとめています。
この記事は、2026年10月時点で国土交通省が公表している資料をもとに、建設業法の改正を整理したものです。一般的な情報提供であり、個別の案件についての法的な助言ではありません。実際の運用は、許可行政庁や専門家にご確認ください。